犬の皮膚病の原因・症状・治療法は?
犬の皮膚病といっても、どのような皮膚病があるか気になる飼い主さんもいると思います。
「脱毛症」「膿皮症」「脂漏症」「疥癬症」「皮膚糸状菌症」「ノミアレルギー性皮膚炎」「アトピー性皮膚炎」「食物アレルギー」などがあります。
免疫力の低下が原因となる「寄生虫」「細菌」「真菌」の感染、「ストレス」「アレルギー」「食生活」「紫外線」などさまざまです。
膵臓や肝臓・腸などから栄養が吸収できずにおこる皮膚病もあります。
犬がかかりやすい皮膚病をみてみましょう。
目次
1.アレルギー性皮膚病
1-1.食物アレルギー
原因
食べ物ででるアレルギー。
アレルゲンは、穀物(小麦・大豆など)や乳製品、鶏肉や卵、牛肉などのタンパク質が多く含まれた食品に多いです。
ドックフードに含まれる添加物なども原因に考えられます。
症状
食べ物によるアレルギー症状として、赤い発疹や皮膚の炎症などが体全体にあらわれ、痒みを伴います。
消化器官にも影響がおよぶ場合があり、下痢・嘔吐をする場合もあります。
発症する年齢はさまざまで、仔犬から高齢犬でもおこる可能性があります。
治療法
アレルゲンを特定するために、「除去試験食」「アレルギー検査(IgE検査・リンパ球反応検査)」を行います。
「除去試験食」とは、これまで与えていた ごはんや食材・おやつなどを1度止め、今まで食べたことのないタンパク質(例え→カンガルー・ダック・ナマズなど)が主原のドックフードを与え1週間ほど様子をみる方法です。
元に戻して再び症状が悪化した場合、その中にアレルゲンがあると診断されます。
症状がでない場合は今まで食べているもの以外から別の皮膚病を疑います。
「アレルギー検査(IgE検査・リンパ球反応検査)」は血液検査で、複数の項目を見ることができます。
炎症には軟膏や抗ヒスタミン剤・ステロイドが処方されることが多いです.
1-2.環境アレルギー
原因
「アトピー性皮膚炎」「接触性皮膚炎」があり、日常生活の中でアレルゲン物質を吸い込んだり・触れたりしたことでアレルギー反応を起こします。
「アトピー性皮膚炎」はハウスダスト・カビなどが主の原因です。
花粉に反応し、毎年同じ季節に発症する犬もいます。
アトピー性皮膚炎は、皮膚バリア機能が低下することが大きな原因と言われます。
体の中の水分を体内にとどめ、アレルゲン物質を体内に入らないようにする機能を皮膚バリア機能といいます。皮膚バリア機能が低下し皮膚の乾燥・外部からの異物の侵入により炎症がおこります。
「接触性皮膚炎」はシャンプーや薬品系・草花・首輪・食器・おもちゃ・カーペットなど、日用品のさまざまなものが体に触れることで発症することがあります。
接触した部分としていない部分は、はっきり境界線があるのが特徴です。
症状
アトピー性皮膚炎は顔やおなか、四肢に激しい痒みがおこることが多いです。
まぶたの炎症が強いと結膜炎を引き起こすこともあります。
接触性皮膚炎は、紅斑(こうはん)や丘疹(きゅうしん)水疱などの湿疹があらわれます。
痒みを伴うため、掻いたり舐めたり・こすったりすると症状が悪化し二次感染につながり、膿皮症と進行します。
治療法
アトピー性皮膚炎は、ステロイド剤や免疫抑制剤を処方されるのが一般的です。
獣医師によっては体質改善のため「減感作療法(げんかんさりょうほう)」をおこないます。
アレルゲンを少しずつ体に入れ、耐性を作ることで症状を和らげていく治療法です。
接触性皮膚炎は、原因と思われるアレルゲンに近づかせない・使用しない方法で改善させていきます。炎症がでている部分には、ステロイド剤や免疫抑制剤投与をします。
2.感染(ノミ・ダニなど)
2-1.疥癬症(かいせんしょう)
原因
疥癬症はヒゼンダニという疥癬虫が犬の皮膚の表面に寄生して発症します。
ヒゼンダニの分泌物への過敏症が主の原因です。
ヒゼンダニは穴を掘り、角質層に入りこみます。
すでに発症している動物との接触や、タオル・ブラシなどを共有することによって感染しやすくなります。
症状
疥癬は感染してから発症まで、3~6週間くらいかかります。
ヒゼンダニは皮膚の中に入りこんでいるので、非常に小さいため確定するには皮膚を削る必要があり、顕微鏡で確認しなくてはいけません。
初期段階では、おなかや肘・耳や目のまわり・かかとなど毛が少ない部分に赤い発疹があらわれます。
進行すると全身に痒みを感じるようになり、激しく掻いて出血します。
痒みが止まらずに掻くことを繰り返してしまうと、幹部のかさぶたがはがれ、そこから細菌が入り化膿を起こし、二次感染による皮膚病を発症させてしまうこともあります。
発疹や痒みのほかには、フケや脱毛の症状があらわれることもあります。
ひどい場合は全身が脱毛し、かさぶたに覆われることもあり、かさぶたの下ダニが繁殖することもあります。
治療法
殺虫効果のある薬を塗る、薬浴、内服薬の投与などの治療で体からダニ・ノミを駆虫します。
多頭飼いしている家庭では、完全に駆虫が終わるまで別々にさせます。
犬同士だけではなく、犬から人にもうつるため、家の中も駆除作業する必要があります。
2-2.毛包虫症(もうほうちゅうしょう)
原因
別名で「ニキビダニ症」「アカラス症」ともよばれる皮膚病で、寄生虫の毛包虫が母子感染をして発症します。
このニキビダニ自体は、どの犬にもあり、人の皮膚にも存在しているので特に恐ろしいダニではありません。
体質やホルモンの異常・免疫力の低下などがきっかけで体内の毛包虫が異常に増えることにより症状がでます。
症状
代表的な症状は痒みを伴わない脱毛です。
特に目・口のまわり・前足などの部分に感染しやすく、ひどくなると全身に広がります。
皮膚が赤くただれる・膿がたまった水疱(膿疱)があらわれることもあります。
悪化すると二次感染で「膿皮症」をひきおこし、出血します。
仔犬の場合は治癒しますが、成犬以降に全身のアカラスになると治療は困難です。
治療をせずに放っておくと、1カ月で全身に広がる場合もあり、敗血症や気管支肺炎をおこし生命の危機にもなりかねないので、早めに受診することをおすすめします。
2-3.ツメダニ症
原因
肉眼ではみえないし小さなツメダニが体表に寄生し、釣り針のようなフック型の針で体液やリンパ液を摂取しながら繁殖する寄生虫が原因です。
ツメダニは皮膚を傷つけ体液・リンパ液を吸いますが、血液を吸うことはありません。
ツメダニに感染している犬と接触することにより発症し、主に若い個体に感染するという特徴があります。
皮膚の上で産卵することもあり、卵は毛に付着して約1カ月で成虫となります。
違う動物同士では感染しないが、人には寄生することがある人獣共通感染症です。
例→犬には「犬ツメダニ」・猫には「猫ツメダニ」・ウサギには「ウサギツメダニ」と、違う動物同士では移りません。
症状
ツメダニ症の特徴は大量のフケや・かさぶたです。
背中・耳の後ろ・股間・腹部・しっぽの付け根などにでます。
フケの元は、ツメダニが産卵した卵の殻や脱皮した皮と犬の皮膚が混ざったもので、大量のフケにみえます。
他の皮膚病ほど激しい痒みはでませんが、初期に毛艶がなくなる、毛が抜けるという貧家があらわれます。
発疹が出て、犬の異変に気が付くことも多いようで、1歳未満の若い犬がかかりやすい皮膚病です。
治療法
薬用シャンプーやスポット剤による殺虫をします。
スポット剤は皮膚に負担がかかり副作用のおそれもあるため病院での処方をおすすめします。
ツメダニは犬だけではなく、人にも同様に刺し、体液・リンパ液を吸います。
畳やカーペット・押し入れの布団・犬のベットなどにも生息・繁殖します。
ツメダニは寄生していなくても10日は生存するといわれているので、家庭内にも潜んでいることも考えられるので、室内の衛生管理と殺虫作業も怠らないようにしましょう。
3.疾患による皮膚病
3-1.マラセチア症
原因
ジメジメした季節に発症が多い、常在菌「マラセチア」が脂質を養分にして増殖し、悪化します。
免疫力がおちたり、ノミ・ダニにかまれたりして皮膚バリア機能が弱ると、皮膚温があがり皮脂の分泌が増えます。マラセチアが活動的になり炎症につながります。
症状
発赤やフケや強い痒みがあります。
幹部がワックスのようにべたついて、独特の油が酸化したような臭気を放つことが特徴です。
顔面・四肢全体・内股・指の間・わきの下・肛門回りなどと全身にわたります。
長引くと皮膚が厚く硬くなり、色素沈着や脱毛を引き起こします。
皮膚病だけではなく、外耳炎をひきおこす場合もあります。
若い犬から老犬まで年齢には関係しないが、免疫力が深く関係していることから、老犬の方が発症することが多いです。
治療法
抗真菌薬の投与やマラセチに効果のあるシャンプーで体表のマラセチアの数を減らします。
もともとアレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎などの皮膚病があると、細菌性の皮膚炎も発症しやすく、なかなか治らないため完治というよりもコントロールが中心です。
3-2.膿皮症(細菌性皮膚炎)
原因
主に「ブドウ球菌」がおこす皮膚病です。
健康な犬の皮膚には常にある細菌です。
皮膚は細菌感染した状態で痒みを伴います。
最初は小さな発疹ですが徐々に大きくなり、進行していくと発疹部の中心に膿をもちます。
これがつぶれると、リング状のかさぶたになり、体毛が束状態で抜けることもあります。
「表面性膿皮症」表皮の一番外側にある角質層に起こる膿皮症です。丘疹と呼ばれるニキビのような小さな膿ができます。
「浅存性膿皮症」皮膚の表皮から少し内部での感染です。膿疱と呼ばれるニキビのような膿がたまり、悪化すると膿疱が破れかさぶたができます。
「深在性膿皮症」毛包全体、真皮そして皮下組織に発症した膿皮症です。細菌の侵入は皮膚の深い部分におよび痒みもひどく、かさぶたができ部分的に肌がごわつき出血します。
発熱があり、元気がなく、食事はできるが痩せてしまうなど、重症になると完治するには時間がかかります。
治療法
膿皮症が原因の皮膚病は抗生物質の飲み薬が処方されます。
「クロルヘキシジン(殺菌消毒)」入りのシャンプーなどを使用するとよいですが、過激なシャンプーや膿皮症に適さない成分が症状を悪化させるので、獣医師の支持を受けましょう。
3-3.真菌性皮膚炎
原因
ツメや表皮に生息する真菌というカビが引き起こす皮膚病です。抵抗力が下がったときに発症します。
このような菌は土の中に多く生息しているので、土で遊ぶ・穴掘りが好きな犬に感染率が高くなります。
免疫力が十分に備わっていない生後1カ月くらいの仔犬は感染しやすく、真菌に感染している犬との接触によっても発症リスクは高くなります。
症状
被毛を引っ張ると簡単に抜けて円形脱毛症になります。
皮膚の柔らかい部分にでて、顔や四肢にでやすいようです。
他の皮膚病より痒みは少なく、皮膚のバリア機能が低下すると二次感染をおこし、痒みがひどくなります。
抵抗力のおちた老犬は感染しやすく、痒みや炎症がより強くでてしまいます。
治療法
抗真菌薬(外用薬・内服薬)の投与をおこないます。痒みを抑える治療が中心となり、悪化すると抗生物質が処方され、治療は長期になります。
真菌は皮膚についている垢などをエサにして増えるため、家庭では薬用・殺菌効果のあるシャンプーで患部を清潔に保ち、シャンプーのあとは幹部をしっかり乾かします。
細菌性の皮膚病は、使用したタオル・寝具・ブラシなどから感染が拡大するので、取り扱いには十分に注意が必要です。
3-4.脂漏症
原因
「細菌の感染」「寄生虫の感染」「ホルモンの異常」「遺伝」により発症し、犬の皮膚のタイプによって「油性脂漏症」「乾性脂漏症」にわけられます。
「油性脂漏症」体表に皮脂が多く分泌され、ベタベタした肌になります。皮膚の新陳代謝が異常に早くなり、分泌量が増えた脂が空気に触れ、酸化して炎症をおこします。
「乾性脂漏症」皮膚の細胞の入れ替わりが速くなり、体表にフケが多くみられ、カサカサ肌になります。乾燥した皮膚がはがれ、細かなフケがでてカサカサ肌を痒がります。
治療法
「油性脂漏症」の場合は食事の見直しで、油の少ないにドックフードを変更するのも改善の1つです。
「乾性脂漏症」の場合はビタミン剤や保湿剤が処方されます。家庭では水分補給も意識的に多くとることが大切です。
脂漏症は体質が関係している皮膚病です。
シャンプーやスキンケア剤が合ってなかったりすることもあり、悪化すると抗生が処物質が処方されます。
「遺伝」の場合は仔犬の時にフケなどの症状があらわれ、その時点で対策をしないと悪化します。
遺伝の場合は完治させることは難しいので、治療は症状の改善やコントロールが主になります。
4.心因による皮膚病
4-1.心因性皮膚炎
原因
犬にもストレスがあり、ストレスがかかることで免疫力の低下があります。
ストレスの原因は運動不足・環境の変化・留守番からくる分離不安などいろいろあります。
犬によって原因が違うため特定が難しいですが原因が分かれば治ることも多いです。
症状
気持ちを落ち着かせるために、体をなめることがあります。
激しく舐めると炎症をおこし、炎症の痒みからさらに舐め悪化させます。
ストレスがあるときは免疫力のも落ちているため傷口から感染症により皮膚病を引き起こす場合もあります。
治療法
リラックスして舐めている場合は、炎症を起こさない程度まで様子をみてみましょう。
無理にやめさせようとすると、逆にストレスになってしまいます。
炎症がおきていたら悪化を防ぐためにも早めに病院につれていきましょう。
ストレスが思い当たる場合は、原因を取り除いてあげることが大切です。
皮膚の変化は、毎日のブラッシングケアで気が付くこともあります。
日ごろのケアは、病気の早期発見とつながります。
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