小型犬に多い「気管虚脱」とはどのような病気?
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愛犬が咳をするようになってきたと、最近感じている方もいると思います。
咳の原因の1つに「気管虚脱」という病気があり、この病気は小型犬にとても多い病気です。
そして「気管虚脱」はどんどん進行をし、自然に治ることはありません。
目次
1. 気管虚脱とは
1-1. 気管
気管は空気を取り入れるための管です。
洗濯ホースのような形状になっており、チューブ状の気管の外側をアルファベットのCの形の軟骨が覆っています。
気管は、このCの形の軟骨で丸い形を保っています。
Cの形の軟骨はCの空いている部分が気管の天井部分になり、空いている部分には膜が覆っています。
1-2. 気管虚脱の症状
気管虚脱とはC形の軟骨の強度が足りず、ゆがんだり・つぶれた膜性壁(C形軟骨の空いている部分の膜)が伸びて気管の内側に入り込み、呼吸をするときに空気の通りが悪くなり呼吸が苦しくなる病気です。
咳がでて・異常な呼吸音・ひどくなると呼吸困難になります。
気管虚脱は慢性であり、かつ進行性で自然に治ることはありません。
1-3. 気管虚脱のグレード
・グレード1
気道直径の減少率は25%程度
気管の内腔へ膜が軽度に飛び出している
・グレード2
気道直径の減少率は50%程度
気管は軽度から中程度に伸び平たんになる
・グレード3
気道直径の減少率は75%になる
気管は重度に平たん化する
・グレード4
気道直径の減少率は90%を超える
天井部分の膜が床側の気管に接触するくらいまで虚脱し内腔がなくなる
*気管虚脱のグレードは4段階です
1-4. 気管虚脱になりやすい犬種
気管虚脱は小型犬・短頭種に多いといわれますが、それ以外の犬種・大型犬でもみられることがあります。
気管虚脱は中年期以上の小型犬に多いといわれますが、気管虚脱になった犬の25%が生後6カ月までに症状が出ていたという報告もあります。
・ポメラニアン ・狆 ・マルチーズ ・トイプードル ・ヨークシャーテリア
・チワワ ・ボクサー ・ブルドック ・シーズー ・スピッツ ・パグ ・ペキニーズ ・ビーグルなど
1-5. 気管虚脱の原因
・遺伝的な要素
・高温多湿など環境的要素
・リードでの強い圧迫
・よく吠えるための気道内圧迫
・肥満
*はっきりとした原因はわかりませんが、マルチーズ・チワワ・ヨークシャーテリアなど「トイ種」小型愛玩犬種に多くみられるため、遺伝的な要素があると考えられています。
1-6. 気管虚脱の症状
・ガチョウの鳴き声のようなガーガーガーと乾いた咳をする
・空気を吸い込むときにゼーゼーゼーと音がする
・運動をしたがらない
・興奮とき・抱き上げられたとき・首輪を引っ張られたときに激しい咳をする
・酸素不足で粘膜が青くなる(チアノーゼ)
・不眠
・失神
・窒息死
*気管虚脱は軽い咳などから急に症状が進行することがあります。
*逆くしゃみ症候群・軟口蓋過長症(なんこうがいかちょうしょう)・肺炎・気管支炎・心臓病でも激しい咳をします。
各病気ごと治療が異なりなすので、獣医師に診断してもらいましょう。
1-7. 気管虚脱を悪化させない
気管虚脱の治療法として内科治療・外科治療を行う場合があります。
症状を悪化させないように、徹底的に悪化要素を取り除くことが基本です。
・太っている場合はダイエットが重要です(薬物治療を成功させるため)
・家族にタバコを吸っている方がいる場合は、犬が煙を吸わないように気を付ける
・首輪をハーネスにする
・史跡除去をする(気管虚脱の犬の少なくとも40%程度が歯周病を発症している)
1-8. 気管虚脱の治療法
・内科治療
症状が軽度の場合は7割くらいの症例で良好な経過がみられますが、病気の進行を抑えることはできません。
内服薬として鎮咳剤・気管支拡張剤・去痰剤・抗生剤・副腎皮質ホルモン・精神安定剤・酸素吸入を使用します。
・外科治療
根本的治療のためには外科手術が必要です。
最近では、日本で新しい手術方法(PLLP法)が発案されました。
① プロテーゼ法
注射器の外套(がいとう)などを気管の外に固定して縫い付ける方法
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装着した人工物の堅さや耐久性・異物刺激などが問題
② ステント法
気管の内腔に金属製の拡張器具を入れる方法
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短時間で装着することができる
敏感な気管に装着するため刺激によって咳がひどくなり、異物反応によって肉芽が盛り上がり、気管内が狭くなってしまうリスクがある
③ PLLP法
ジグザグの円筒形でバインダーノートのクリップに似た形状を気管の外に装着し、非吸収糸(溶けない糸)で潰れた気管へ牽引を加え、円筒形の正常な形状に戻す方法
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素材は異物反応が起こりにくく、柔軟性があることから良好な成績が得られています
2. まとめ
気管虚脱は呼吸がとても苦しい病気です。
病気は進行していくものであり、自然に治ることはありません。
早期発見であり悪化させないように気を付け、進行を遅らせてあげたいものです。
私の愛犬も、2歳の時に気管虚脱と診察されました。
10歳の時は手術の話もでましたが、薬も服用せずに17歳7カ月まで生きられました。
逆くしゃみ症候群もあり、発作の咳がでるときはハラハラしましたが、悪化しないように愛犬と頑張りました。
愛犬が咳をしたら軽視することがないように、なるべく早く獣医師に診察してもらうことが大切だと思います。
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