東洋医学では陰陽論という、陰と陽のバランスが大事とされています。
人にとって良いことは、犬にとっても良いものなのか。
人体の五臓六腑とは、いったいどのようなことなのでしょうか。
体のバランスを考えながら、美味しく食事を取れるよう、陰陽から五臓六腑の仕組みをみてみましょう。
1.陰陽
薬膳の考え方には「陰陽」があります。
これは太陽が昇って朝が来る、太陽が沈んで夜が始まり1日が終わる。昼と夜(太陽と月)の移り変わりから生まれた考え方です。
「陰」は夜・「陽」は朝のイメージです。
「陰」に傾くと体が冷え、「陽」に傾くと肌が乾燥したりします。
体を温める食材・冷やす食材・どちらでもない食材を上手に組み合わせ、人も犬も美味しく食べることが大切です。
2.五行
薬膳の基本になる考え方に五行があります。
五行とは自然界に存在する物質を「木・火・土・金・水」の5つの性質に分けられています。
相生(そうせい)「促進」・・・相手の働きを促進させ臓器が活発に機能するように働きかける
相剋(そうこく)「抑制」・・・相手の働きを抑えてバランスをとる
五行には「五臓(肝・心・脾・肺・腎)」・「五味(酸・苦・甘・辛・鹹)」・「季節(春・夏・梅雨・秋・冬)」とあります。
3.五臓の役割
肝 気や血の流れなどをコントロールしている
心 五臓をコントロールしている
脾 消化吸収機能をコントロールしている
肺 呼吸機能をコントロールしている
腎 体内の水分代謝などをコントロールしている
4.五臓六腑
五臓六腑という言葉は聞いたことがある方も多いと思います。
五臓は「肝・心・脾・肺・腎」の臓器の働きを分けたものです。
体のどこかに不調がでたとき、薬膳の世界は食材の効能とともに五行である「木・火・土・金・水」との関係をもとに料理を作り改善へ導きます。
六腑は「胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦」を指し、三焦は体内の空間を意味しているので、臓器がないとして外して考えることもあります。
三焦を外した五腑は五臓と対を成します。
関係は五臓が主・五腑が従という相互関係を持っています。
五臓が栄養を貯蔵して使う、五腑は口から入ったものを仕分けし、栄養を五臓に送り、不要なものを体外に排出する働きをします。
5.臓器の働き
5-1.肝
肝臓は本来の働きは消化液である胆汁を作り、栄養素を貯蔵し必要な形に変化させる。体にとっての有害物質を解毒分解します。
肝とは肝臓だけを表すのではなく、対応する五腑の胆のうのほか、爪・目・涙・筋肉なども分類されます。
肝は主に気の流れを調節し、血を蓄えて血の量をコントロールし、必要な場所に適量の血を送ります。
情緒にも関係あり、感情の影響を受けやすいので肝に異常があると、怒りやすい・落ち込むなどの感情が不安定になることがあります。
肝は目にも密接に関わっていて、肝が不調をきたすと目のトラブルとなって現れることもあります。
5-2.心
心臓のようにポンプとして血を送り、体の隅々まで栄養を届けると同時に体温も司ります。
大脳の一部や自律神経の働きも含んでおり、「精神」「思考」「意識」を調整する働きがあります。
心臓や五腑の小腸・顔面・舌・汗・脈などに分類します。
心臓の機能が低下すると血が不足して、顔色が白くなり、動きや胸の痛み・息切れ・不眠・情緒不安・物忘れなどが現れることもあります。
5-3.脾
胃などの消化器全般をコントロールしています。
胃で消化した栄養物質や津液を吸収し、全身に送る働きがあります。
脾の機能が衰えると、疲労・食欲不振などが現れ水分代謝も乱れるので、下痢・浮腫み・怠さなどが現れることがあります。
脾臓・胃のほか、筋肉や四肢・口・唇などにも分類されます。
5-4.肺
肺は気と呼吸をコントロールします。
外部にある、きれいな気を呼吸によって取り入れ体内の気を作り出します。
全身に津液を運び、汗や尿として排出します。
肺の働きが低下すると、気と津液で守られていた皮膚バリアを失い抵抗力が落ちるため、肌荒れや風邪などを引き起こす恐れがあります。
水分循環の働きをしているので、肺に潤いが不足し便秘がちになることがあります。
肺、五腑に対する大腸・皮膚・体毛・鼻・のど・気管支・音声など分類されます。
5-5.腎
腎は生命力を貯蔵する役割で、成長や発育・生殖活動をコントロールし、骨や歯・髪の毛の成長を司ります。
腎が弱ると生命力の弱さにもつながるが、腰痛・歯がもろい・耳鳴り・不妊・脱毛が現れることがあります。
生命エネルギーの弱さは老化が早まることにもなるので、老けやすく・子供の場合は発育が遅れることもあります。
腎は水分代謝の調整も行うため、浮腫み・頻尿・慢性の下痢などの症状も出やすくなります。
腎臓の五腑は、膀胱・脳・骨・骨液・耳・泌尿生殖器・肛門・毛髪に分類されます。
*津液(しんえき)とは 津(陽性の水分・気・血・水)
6.まとめ
薬膳には、健康な人・犬向けの養生を目的にするもの、病気の人向けの補助治療的や治療を目的にするものという2つの目的があります。
五臓六腑の関係を知って、薬膳上手に使い美味しく食べることが大切です。
レストランなどでよく言われている「美味しい」は料理自体の善し悪しは全全体40%と言われます。
では、残りの60%はなんでしょう?
それは環境です。環境とはお店の雰囲気・接待・一緒に飲む飲み物・一緒に食べる相手などです。
一流のレストランで何万円のコースを食べても、接客が悪い・お店が汚い・食べる相手と相性が良くないとなると、せっかくの料理が美味しく感じません。
反対に気の置けない仲間とワイワイと、ビールにおつまみの方が美味しく感じたりします。
それは犬も同じです。怒られながら食べるのと、飼い主がそばで見守っていてくれるのとでは美味しさが変わってきます。
美味しく食べることは、心にも体にも関わってくるので美味しく食べる環境にしましょう。
以前、犬の薬膳ドックフード(ドックフードの薬膳ってどんなものなの?)をご紹介させていただきましたが、薬膳を基礎とした食事による「養生」と「治療」が大切な犬または、人の食事として「食事で健康になる」という考えで、毎日の食事を美味しく食べて心も体も健康を維持しましょう。