猫に多い病気に心臓病があります。
猫の3大心臓病は、「肥大型心筋症」「拘束型心筋症」「拡張型心筋症」です。
今回はもっとも多い「肥大型心筋症(HCM)」について覚えておきましょう。
犬に多い心臓病はこちらを参考にしてください。
1.猫の肥大型心筋症とは
「肥大型心筋症」とは、心臓の筋肉が肥大(厚みが増す)してしまいます。
肥大型心筋症は、心臓の右心室の筋肉が肥大し、心臓を流れる血の量が減り心臓が縮んだとき(ポンプ)に送り出される血液量も減ります。
肥大型心筋症の初期は、目立った症状がないため約33~55%は無症状のまま進行してしまい、肺水腫や動脈血栓塞栓症など、重篤な状態になって初めて発見されることが多い疾患です。
肥大型心筋症は聴診でも雑音の出ない猫も多く、心臓エコー検査などで確認されることが多い疾患です。
2.猫の肥大型心筋症の症状
初期段階では症状がほとんど出ないため、重症化してから発覚することが多いです。
症状が悪化してくると、呼吸が荒くなる・咳が出る・うずくまって休むなどの変化が見られる場合がありますが、異変がまったく見られなかったのに突然倒れるということもあります。
心筋症の発症年齢は、生後3カ月から17歳までなどと幅広い年齢で発症しているので、まだ若いからと心筋症にならないとは言えません。
症状はほとんど認められないのですが、重度に進行すると呼吸・食欲・活動に異常が出て咳をすることもあります。
初期から見られやすい症状
・元気がない
・食欲が落ちた
・疲れやすく遊ばない
すでに進行した症状
・呼吸が荒い、口を開けて呼吸をする
・乾いた感じの咳をする
・動くことを嫌がる
・失神を繰り返す
・後ろ足をひきずる(後ろ足に麻痺がみられる)
・後ろ足が異常に冷たい
・肉球が白っぽくなる
・歯肉や舌が白っぽい、または紫色になる
・失神する
・腹水
・突然死
すでに進行した症状がある場合は、重症化していて深刻な状況の場合があります。
一刻も早く獣医師に診てもらいましょう。
3.猫の肥大型心筋症のステージと治療
・ステージ1
心筋症の素因があるが無徴候
治療不要
・ステージB1
鬱血性心不全(CHF)や動脈血栓塞栓症(ATE)のリスクが低い=左心房拡大がない~軽度
治療不要、年1回以上の心臓超音波検査を受ける
・ステージB2
鬱血性心不全(CHF)や動脈血栓塞栓症(ATE)のリスクが高い=左心房拡大が中~重度
左心房や右心室収縮の低下・左心室の壁の肥大など
動脈血栓塞栓症(ATE)のリスクが高い場合は、抗血栓療法をする
・ステージC
現在/過去のCHFやATEがある
「急性期」肺水腫や胸水貯留が認められる場合は、直ちに利尿剤投与や胸水の抜去。
酸素給与や鎮静剤投与。
心不全状態から離脱が得られるまで、入院下で利尿剤±強心剤で治療。
「慢性期」利尿剤を重症度に応じた用量で投与。
抗血小板薬の投与。
2~4カ月毎検査して、自宅で安静時の呼吸の記録。
・ステージD
治療に抵抗性の鬱血性心不全(CHF)がある
利尿剤の変更。
左心室収縮の低下が認められる場合は、心不全治療をする。
*肥大型心筋症の進行速度や重症度は、個体差が大きく病状も一様ではありません。
ゆっくり進行して、シンプルな内科療法のみで寿命を全うできることもあれば、急速に進行してしまうこともあります。
4.まとめ(自宅でできること)
猫の心筋症は、早期発見がとても難しい病気です。
しかし早期発見ができれば症状を緩和したり、進行を遅らせることができます。
早期発見をするためにも、健康診断のときに心エコー検査を受けると良いでしょう。
また、自宅でできることで心拍数・呼吸数を計ってみましょう。
猫の心拍数は、安静時で1分間に130~160拍なので200拍以上が継続する場合は、心臓に異常があると思われます。
猫の背後から両脇の下に手を入れ抱っこし、手に伝わるトクトクという鼓動を数えてみましょう。
猫の呼吸数は、安静にしている状態で1分間に30回程度なので、睡眠中に呼吸数をときどきチェックすると良いでしょう。