犬を飼っていると、クッシング病(クッシング症候群)という病気を耳にします。
クッシング症候群は人間でもある病気ですが、犬の場合は珍しい病気ではありません。
では、いったいクッシング症候群とはどのような病気なのでしょうか。
1.クッシング症候群
1-1.クッシング症候群とは
クッシング症候群は別名副腎皮質機能亢進症(ふくじんひしつきのうこうしんしょう)といいます。
腎臓の上にある副腎という小さな分泌器官から、分泌される「コルチゾール」というホルモンが、慢性的に過剰に分泌されることによって引き起こされます。
クッシング症候群は「コルチゾール」の必要以上にホルモンが分泌されることによっておこる病気で、5歳以上の中~高齢犬に多く発症し、オスよりもメスにかかりやすい病気といわれます。
クッシング症候群の8割強が脳の下垂体が分泌を過剰に指令(下垂体の腫瘍)、1~2割が副腎の異常(副腎の腫瘍)によって発症します。
1-2.副腎の役割
副腎とは、腎臓の上に左右1対である小さな臓器です。
副腎は数種類のホルモンを分泌し、副腎の一部である副腎皮質から「コルチゾール」というホルモンがでています。
「コルチゾール」は炎症の制御・炭水化物の代謝・タンパク質の異化・血液の電解質のレベル・免疫反応など広範囲で深く関わっています。
また、何らかのストレスを受けたときに、「コルチゾール」はストレスから大切な脳がダメージを受けないように、ストレスと戦うための栄養源となるブドウ糖を脳に送り、筋肉を分解して糖に変え(糖新生)その糖を脳に送る手助けをしています。
通常では副腎は脳の一部「下垂体」から出される指令によって、コルチゾールを出す量を調節します。
「下垂体」が体にコルチゾールが必要なときは、「コルチゾールを作って」と副腎に指令を出して、副腎が必要な量のコルチゾールを作り出す仕組みです。
「下垂体」か「副腎」のどちらかが原因で、コルチゾールが必要以上出し過ぎることがクッシング症候群です。
1-3.クッシング症候群の症状
□水を飲む量が多く、おしっこの量・回数が多い(多飲・多尿)
□食事を異常に欲しがる
□胴体が左右対称に脱毛する
□皮膚病がなかなか治らない
□おなかが膨れる(ポットベリー)
□四肢や頭の筋肉の萎縮があり、足腰が弱って動きがらない(運動不耐性)
□呼吸が速い(パンティグ)
歩きたがらない・疲れやすくなる・抜け毛などの症状は「年齢のせいだろう」と見過ごしやすいです。
脳下垂体に腫瘍がある場合は、神経症状(徘徊・夜鳴きなど)を併発することもあります。
皮膚が弱くなることで、おなかの筋肉を支えられず腫れて目立つようになり、皮膚感染のリスクが高まります。
病気が進行してくると免疫が低下し、皮膚炎や膀胱炎などの感染症にかかりやすく、糖尿病も併発することもあります。
治療が遅れ悪化した場合は命にかかわる可能性があるので、適切な治療が必要です。
1-4.クッシング症候群の治療
・副腎腫瘍が原因
副腎腫瘍が原因の場合は、腫瘍化している副腎を手術で摘出することを第一に検討します。
腫瘍化した副腎を摘出しますが、転移が起きていたり血管と腫瘍が重度に癒着(ゆちゃく)して摘出困難な場合は、飲み薬でコルチゾールの分泌を抑えます。
・下垂体腫瘍が原因
下垂体は手術で切除をするのが難しい場所にあるため、手術を受けられる病院は限られています。
小さな腫瘍の場合は、飲み薬でコルチゾールの分泌を抑えます。
大きい腫瘍の場合は、放射線治療でできるだけ小さくしてから、飲み薬でコルチゾールの分泌を抑えます。
*放射線治療では何回もの全身麻酔が必要となるため、獣医師とよく相談をしましょう。
*薬を飲む治療は症状を緩和するための治療で、完治を期待した治療ではありません。
2.まとめ
犬のホルモン病の中で最も多いと言われるクッシング症候群は薬を飲ませ始めたら、家で愛犬の様子を注意深くみて、食欲や嘔吐・下痢をするような普段と違う様子がみられたら、薬が効きすぎてコルチゾールが必要以上に下がってしまっている可能性があるので、すぐに病院に受診するようにしましょう。
クッシング症候群には予防法はありません。
また完治もしませんが薬を使用し、上手に病気と付き合っていくことで延命をできるケースもあります。
少しおかしいなと思ったら、早期に受診することが大切です。
“犬のクッシング病ってホルモンが関係する病気なの?” への2件の返信