犬のワクチン接種の考え方

 

春になると、毎年狂犬病のワクチン接種の通知が届きます。

犬は狂犬病のワクチンのほかに、混合ワクチン接種をしている飼い主さんも多いと思います。

ワクチン接種に対していろいろな考え方があると思いますので、今回は一緒に考えたいと思います。

 

 

1.ワクチンとは

 

 

ワクチンは、本来動物が持っている病原体に対する抵抗力(免疫)を利用し、感染症に対する免疫をあらかじめ作らせておく製剤です。

あらかじめ接種することにより、病原体や細菌の毒性を弱めたり・失わせたりしたものを体内に入れ、抗体を産生させ免疫反応の記憶を残せます。

実際の病原体が侵入したときに、すばやく免疫により防御反応が働き発病させないようにします。

ワクチンをあらかじめに接種しておくことで、感染症の発症や症状の軽減が期待されます。

 

 

2.狂犬病

 

 

狂犬病予防接種は年に一回、狂犬病予防法により飼い主に義務付けられています。

日本では、狂犬病は無くなったと思っている飼い主も多いと思います。

日本国内での狂犬病発生事例は、1957年以来なく1970年と2006年、2020年に海外で感染して、日本国内で発症したのが各1例あるのみです。

しかし世界では、ほとんどの国(150国以上)で依然と発生しており、2017年にWHO(世界保健機関)から示された全世界の狂犬病状況では、年間死亡者は59,000人でした。

狂犬病は発症すると治療法はなく、ほぼ100%死に至ります。

しかも犬だけっではなく、猫やほかの哺乳類のほとんどすべてに感染する人獣共通感染症です。

感染経路は、狂犬病に感染した動物の唾液や血液が体内に侵入し、感染から1週間から1年以上(平均1カ月)の潜伏期間を経て発症します。

日本には狂犬病を発症した犬がいなくとも、輸入動物が感染していたり私たちが海外に行って感染することもあります。

現在の狂犬病の清浄国・地域(農林水産大臣指定)は、アイスランド・フィジー諸島・オーストラリア・ハワイ・ニュージーランド・グアム・日本と、世界でも数少ない島国や地域だけです。

狂犬病ワクチン接種に対して抵抗のある飼い主もいると思いますが、日本では狂犬病ワクチンは犬だけではなく人間やほかの哺乳類を守るために必ず接種をしなくてはなりません。

 

 

3.混合ワクチン

 

混合ワクチンは、飼い主の任意で受ける感染症予防接種です。

犬のワクチンは、コアワクチン・ノンコアワクチン・非推奨ワクチンに分類されています。

・コアワクチンとは

犬ジステンバーウイルス・犬パルホウイルス・犬アデノウイルス(犬伝染性肝炎)を予防するワクチンです。

これらの病気は、人の健康も害する可能性や人畜共通感染症で致死率の高いウイルス伝染病です。

 

・ノンコアワクチンとは

犬パラインフルエンザウイルス感染症・犬コロナウイルス感染症・犬レプトスピラ症・犬伝染性気管支炎(ケンネルコフ)などを予防するワクチンです。

これらの病気は地域や飼育環境によって発症率が異なるため、生活環境に合わせて獣医師と相談してください。

 

*ノンコアワクチンは不活化ワクチン(病原体を殺菌し感染性のない状態)のタイプが多く、体への負担は少ないと言われます。コアワクチンと比較すると、効果は長持ちしないので年一回の接種が推奨されています。

 

 

4.接種の予防効果の期間

 

 

現在日本では多くの飼い主は、年一回の接種をしていると思います。

WSAVA(世界小動物獣医師会)では、コアワクチンは3年ごとで十分な予防効果があると報告されています。

しかし、不特定多数の犬と接触する場合(ドックラン・トリミング・ペットホテルなど)は予防が必要です。

場所によっては、利用するのに1年以内にワクチンを接種した証明書の提示が必要な場所もあります。

ノンコアワクチンの犬パラインフルエンザウイルス感染症は、毎年接種が必要なのですが単独のワクチンは販売されていないため、5種のワクチンを毎年接種しなくてはなりません。

 

 

5.まとめ

 

 

犬の混合ワクチンには、いろいろな考え方があると思います。

愛犬を感染から守りたいと思う飼い主さん・必要がないワクチン接種(リスク)から愛犬を守りたいと思う飼い主さんがいます。

現代では、わずかな採血で検査キットを使用すれば、愛犬に抗体があるかないか簡単に判断できるようです。

この検査キットを使用して、愛犬に抗体があれば接種しない・抗体がなければ接種するということもできるようなので、獣医師に相談するのも良いかもしれません。

狂犬病予防接種は、日本では年に一回必ず接種することが法律で決められているため必ず接種しましょう。

また老犬の場合でも、生活環境に合わせて狂犬病ワクチンや混合ワクチンが必要となります。

獣医師と相談しながら、愛犬にとって一番良い方法を選んでください。

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