私たち人間にも膵炎はあります。
発症すると激しい痛みを伴いますが、犬の膵炎も同じなのでしょうか。
ここでは、膵炎について覚えておきましょう。
1.犬の膵炎とは
膵臓とは
胃や十二指腸と同様に、消化を行う臓器です。
膵液はアルカリ性で、胃液を中和して腸粘膜を保護します。
また、膵液内の分解酵素は腸内で行う食べ物の消化や栄養素の吸収を円滑にし、膵臓から分泌されるホルモン(インスリン・グルカゴンなど)は血液中の血糖値をコントロールします。
膵臓の働きには、「消化酵素を出して食物を分解」「ホルモンを分泌して血糖値をコントロール」があります。
膵炎とは
食物を消化させる消化酵素(アミラーゼ・トリプシン・リパーゼなど)がありますが、この消化酵素の膵液が活性化してしまい、蛋白質でできている膵臓本体は活性化した膵液の消化を受けて強い炎症を引き起こす病気です。
この膵炎には、急性膵炎と慢性膵炎があります。
急性膵炎
膵臓の自己消化により炎症を起こし、急激に食欲不振や嘔吐・下痢など激しいい症状が出ます。
治療が遅れると、炎症が全身の臓器に影響を及ぼし重症化します。
慢性膵炎
膵臓の慢性的な炎症で、徐々に正常な膵臓の細胞に線維が増え硬くなり炎症を繰り返し起こし、膵臓が元の状態に戻らなくなります。
2.犬の膵炎の症状
急性膵炎
初期症状で食欲が落ち、突然に嘔吐と下痢が起きます。
痛みから呼吸が浅くなり、膵臓のみの炎症の時は体温が上がらないこともありますが、ほかの臓器まで炎症が広がると「炎症性サイトカイン」と呼ばれる物質によって高熱を引き起こします。
末期症状では、白目部分などが黄色ぽく見える黄疸が見られ、腎不全や糖尿病の合併症を引き起こすことがあります。
激しい炎症のため、免疫機能が狂ってしまい臓器内の細い血管が詰まる「血栓」ができることもあります。
この血栓により様々な臓器が傷つけられ、ショック状態などの重症な症状がでます。
慢性膵炎
慢性の場合も急性とほぼ同じですが、慢性は徐々に症状が現れるため気づくのが遅くなる場合が多いようです。
末期症状も急性とほぼ同じ症状で、「播種性血管内凝固症候群(はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん)」という炎症が進行してしまうと助からなくなることがあります。
播種性血管内凝固症候群(DIC)
通常出血すると血液は5~10分で固まります。これは、出血した部位だけで血管内では血液は流れています。
出血した部位で血液が固まるのは、血小板が集まり出血部位を囲んで血餅の形成(血液凝固)をし血液を固めます。
播種性血管内凝固症候群は、通常出血部位のみで行われる凝固が、血液中に種を撒くように血液凝固反応(血栓)が無秩序に起こる症候群です。
3.犬の膵炎の治療
膵炎には特効薬はありません。
溶けてしまった膵臓は修復はされないため、一刻も早い炎症の鎮静化は必要です。
内科療法
膵炎は内科療法が基本です。
・循環血液を確保するために輸血療法
・嘔吐を抑える制吐剤や制酸剤の投与
・激しい痛みを和らげる鎮痛消火剤の投与
・膵臓の酵素が活性化するのを抑える蛋白分解酵素阻害剤の投与
膵炎は炎症が治まってくれるのを待つことなので、酵素を刺激しないように短期間の絶食を行うことがありますが、症状が軽い場合は獣医師の指示のもと自宅で投薬治療を行うこともあります。
症状が重い場合や脱水症状のある場合は、即座に入院をし絶食・絶水・点滴などを行います。
食事療法
軽度の膵炎は自宅での食事療法が必要です。
低脂肪・低塩分の消化がしやすく、膵臓に負担がかからない食事に切り替えが必要です。
獣医師の指示のもと、膵臓に負担をかけないように少量で食事の回数っを増やし、1日の量を与えるようにしましょう。
膵炎は再発しやすい病気です。
一生厳しい食事制限があり、ジャーキーなどのおやつ・高脂肪・高たんぱくの食物は一切与えられません。
*獣医師によく相談をして、獣医師の指示のもとで食事療法を行ってください。
4.まとめ
膵炎は食事内容と大きく関わっています。
犬は人間ほど、脂肪の分解や代謝がうまくできません。
人間の食べ物や高脂肪なものを食べていると、膵臓に負担をかけてしまいます。
食事やおやつには、十分注意をして与えましょう。
病気になる前は、理想の食事も参考にしてください。